2014年8月26日火曜日

時の再構成

時の再構成の問題に立ち返ることになります。

歴史の歴史学的見直しについては、アナール学派の仕事が名高いものですが、まず史家の通常の歴史構成に対して、もっともはげしく抵抗したのは文芸批評家の小林秀雄氏だったでしょう。

小林氏は歴史の再構成には死んだ子どものことを思い出してやまない母親の精神が必要であることを主張し、さらにはベルクソンの時間論にならって、時の分岐点でOからAにすすんだ移動は、実はOからBにすすむこともできたものだ、といった可能性の並存を否定しました。

アナール学派の仕事に比較して、さらに付け加えるべき条件は、人の認識や言葉の獲得の過程での社会性の反映についてです。人は社会の中で社会的に認識を豊かにしていきます。学習を前提として持たない認識の発達はありえません。

タルコフスキー氏が、映画製作の中で呈した時の再構成の具体的方法には、必然性個別性と社会性とが両立されていました。これはロシアの大地に根差した叡智であったと言えると思います。