2012年2月16日木曜日

イエイツへの言及(3)

「併しイエイツはこの詩で、必ずしもその鳥(金で出来た鳥)になりたいと言っているのではない。人間は生れた時に自然に従った形をしていて、やがてその銘々の精神が取るべき形をなすことに向って行くのが成長することであり、我々が遂になすに至る形が自然のものではないのは、人間の精神がもともと自然通りに働くものではないからである。その結果が、例えばビザンチンのモザイクに似て自然に反しているのは、それ故に初めから予定されたことであって、精神はそうしてその本性に違わない努力を重ねることで漸くその形を得る所まで行く。

Cast a cold Eye
On Life, on Death.
Horseman, pass by!

生きていることにも、死にも
冷い眼を向けて、
馬で通るものは馬を走らせて去れ。(墓碑銘)

イエイツは一つの詩よりも詩を書く仕事と、それをする自分に同じ訓練を施すのを、詩を不純にする道とは考えなかった。彼は詩人も人間であることを固執し通して、その作品が近代詩でも、作品とそれを書く人間の通常の関係を回復したかに見える。それは我々に洗練された象徴詩を書くことが長生きをして、広大な別荘や近所の茅屋で晩年を自適して過すことの邪魔にならなかった支那の詩人達を思わせ、そこにも英国の近代文学というものの性格が窺えるのである。」